新型コロナウイルスに関する対応に関して

町の家のこれまでと今後について

 町の家は2018年7月14日に開業しました。

 当時から複数の仕事と何足かの草鞋を履きながら、町の家を生計の柱にしていく計画でした。

 2019年は4月の観桜会期、5月の GWにまたがる10連休、7月末から8月にかけての夏休み期間、9月下旬〜10月にかけての行楽シーズン、12月以降の雪の季節と、大いに賑わいました。

繁忙期をもとに閑散期をどうしていくかなど、さまざまな計画を立てる土台にしていくつもりでした。

 ところが、2020年初頭から新型コロナウィルス騒動が起き、未知のウィルスにどう対応していくか、世界中が大混乱に陥りました。日本では1月末、クルーズ船乗客の感染に始まり、3月には学校の一斉休校要請、4月には緊急事態宣言と、憲法上の根拠もよくわからない思いつきのような行政措置がとられました。

 4月といえば、我々上越市の宿泊業者にとっては高田公園観桜会という一大イベントがある最繁忙期です。前年より鈍いながらも3月末には町の家にも観桜会期の予約が数件入り始めていましたが、世の中のムードは「外出自粛」一色。すぐにキャンセルとなり、1年間の売り上げの約3分の1を占める観桜会期〜GW期の売り上げが吹き飛んでしまいました。

 私はなんと危ない商売をやっていたんだろうと思いました。政府に簡単に仕事・生業を潰されたわけですから。2010年台後半の日本は東京オリンピック開催に向けインバウンドを中心に、個人旅行ブームのようなものが巻き起こっていただけに、こうした形で需要を失うことは誰も予想し得なかったのではないでしょうか。

 そして私は今後どのように生計を立てていくか、中長期的な計画も含め、新たな見通しを立てる必要が出てきました。

 この当時、私は司法書士の資格を取得する計画がありました。雁木町家の空き家問題に関わっている司法書士の先生のあとを引き継げたら・・・なんてことも考えたりしましたが、それ以前は弁護士を目指し司法試験予備試験の勉強をしていた時期がありました。というのも、私の短い会社員生活は理不尽が横行するのを耐え忍ばなくてはならないいわゆるブラック体質の企業での生活でした。自分は早々に逃げ出せたのが幸いしましたが、同じ年に親会社に就職した方は1年目の年末に自ら命を絶ってしまっていたことがのちに判明し、一時期世間を騒がせたこともありました。私は学生時代からブラック企業が憎く、従業員の苦しさの上に成り立つ会社経営などあり得ない、この歪な構造をなくさなくてはいけないと思っていました。

 こうした経緯から、弁護士を目指すことになったのですが、学生時代にバイク旅をした時に憧れを持ったライダーハウス・旅人の宿をやりたいという思いが先にあり、生計を立てつつやりたいことをやるという、なんとも欲張りな指針を立てたのでありました。2015年10月のことです。

 もっとも、先に民泊という形で旅人の宿が実現したのですが、未だ司法試験予備試験には受かっていません。上越高田への移住が現実化しそうになった2017年10月に司法書士試験への転向をしたのですが、2018年3月の上越高田移住後は生計を立てるためのバイトと民泊開業準備などに日々忙殺されてまともに勉強時間が取れるわけもなく、開業後の2019年は他の仕事も民泊も忙しかったこともあり、なんとか生計も立っていましたし、資格取得のことは有耶無耶になりつつありました。

 そんな中、2020年4月下旬、当時やらせていただいていたラジオパーソナリティの仕事をめぐってトラブルになりました。私が放送日の夜に微熱を発した(結局一時的な知恵熱だったのですが)ことを馬鹿正直に報告したことがきっかけで、翌日の放送には来るなとの通告を受けたのです。

 交渉の末、報酬の件は解決したのですが、なんだか自分が無力であることを改めて痛感したのです。結局組織の都合で左右されてしまう我が人生に、なんの希望があろうかと。自分にもっと力があれば、組織と対等に渡り合えるのにと。やっぱり弁護士になりたいと決意したのはこの夜のことでした。同日昼間に、司法書士試験の願書を上越の法務局で入手できなかったことがある種の運命だったのかもしれないと思っています(例年通り本局からの郵送取り寄せを面倒くさがった私に非があるのですが)。

 話を戻しますが、今の私の生活スタイルはこの頃に固まっていきました。すなわち、2020年2月までの、塾の仕事とラジオの仕事とともに民泊の営業をするというスタイルから、塾やラジオの仕事の合間に試験勉強をするというスタイルに変わり、ラジオの契約が終了してからは家事と勉強の合間に息抜きで塾の仕事やバイト、民泊をするスタイルになり、民泊営業の優先順位は劣位になりました。どうせもう人なんか来ないし、需要を潰された以上、供給力を維持するのに労力を割くのは合理的でない、との判断でした。多くの飲食店や宿泊業者が廃業したのはまさにこの点にあると考えています。

 そもそも、開業から2019年までの1年半ほどの期間、さまざまなゲストさんが遊びにきてくれましたが、正直な話、ミスマッチも少なくありませんでした。こちらがゲストさんを選ぶということをしなかった結果、安さだけで来られる方や、大前提として「他人の家」であるという点をお忘れになっているような行動をとられる方もいらっしゃいました。こうしたミスマッチをなくすことは以前からの課題でしたが、コロナ禍を機に答えが見つかった気がしました。

 他方、2019年10月から始めた持ち寄り日本酒会はコロナ禍でも継続し、その友人の輪は私の精神的な大きな支えとなり、私の上越高田暮らしの大きな部分を占めています。また、日本一周がブームとなった2020年後半から2022年までは旅人さんの訪問も戻ってきました。2020年以降も私たち夫婦はそれまでと変わらず旅行したりしましたので、やっぱりこんな時でも旅は必要だよと、旅は面白いんだよと。そしてこうした旅人ゲストさんたちとの交流こそが私が簡易宿泊施設をやりたいと思った原点、北海道のライダーハウスで感激し感化された空間なんだよと。

 民泊だけで生計を立てることをやめた私にとって、民泊を続ける理由は、人の輪を広げる点にあります。率直にいえば、町の家と相性のいい方との輪を広げ、ゆるく繋がっていられる場所。そしてタイミングが合う時にたまに遊びにきてくれる、ゆるく集まれる場所でありたい。そういう場を目指す結果、私も私の人生・生活をしっかりビジョンを持って送らなければいけないと思うのです。

 そもそも、町の家のような家主滞在型の民泊は住人の生活空間の一部を提供する点にその本質があるところ、住人の生活があってこそ成り立つものだと考えます。これを犠牲に民泊受け入れを優先しては本末転倒です。何をするにも自分の人生ありきですし、民泊で生計を立てられない以上、民泊の旅人受け入れも自分が生活できてこそ成り立つものです。

 こうした経緯から、以下の対応を取らせていただいております。

・まず予約方法をホームページの予約フォームとインスタグラムのメッセージのみとすることにし、電話及びエアビーからの予約を廃止し、町の家に宿泊したことのない方からの紹介による予約を廃止しました。海外からの旅行者の方の入口を無くしてしまったのは申し訳ないですが、日本人のエアビーユーザーと町の家との相性は、正直あまり良くありませんでした。ゲストの予約方法と町の家との相性には一定の相関関係があると考えています。端的にいえば、「メッセージを打つという手間を惜しまないでくれる方」というのを一つのハードルとすることで、相性を測っています。電話というのは便利ですが、相手の時間をリアルタイムで奪うものでもあります。私が他の仕事や活動をしているため、出られないこともありますし、互いの都合の良い時に返すというやりとりは対等なコミュニケーションの基本だと思っています。

・ライダープランを除く宿泊料1名3300円は政府による大増税がない限り動かすつもりはありません。これはそれ以上のサービスを提供できないことと、そのつもりもないことの表明でもあります。もっとも、地酒の試飲付きなので、町の家と相性のいい方には満足いただけるのではないでしょうか。

・上述の通り、現在は弁護士を目指し勉強することが私の生活の柱となっている他、夫婦での家事分担、夫婦での夕食・団欒の時間、私の他の仕事との兼ね合いで、急な予約に対応することが難しい場合が少なくありません。ご予約は余裕をもって事前にいただけると受入可能性は高くなると思います。

・旅人向けの寝袋持参ライダーチャリダープランは直前でも対応できる可能性は高いですが、直前のご予約の場合、チェックイン対応時間が遅くなる場合があります。

・私たちも旅をする(夫婦での場合はほぼ旅行ですが)故に、お泊まりいただけないこともございます。また、遠方にいる互いの親族との交流も大切にしていきたいため、年末年始等は営業できない可能性が今後高まると思います。

持ち寄り日本酒会開催日は参加者の宿泊が最優先となるため、一般のゲストさんは原則としてお泊まりいただけません。

ずいぶん気ままな営業であると我ながら思いますが、そもそも東京五輪開催に伴うインバウンド需要増加における宿泊需要逼迫対策として始まった民泊制度ですし、年間で180日しか営業できない制約がある以上、これが本来の姿なのだと思います。

お客様は神様ではなく、お客様も人であり事業者も人です。

日本のサービス業も転換期が来ているのではないでしょうか。

町の家の考え方・管理人の価値観に賛同いただけない方はどうぞお金を出して、近隣のホテルさんにお泊まりいただき「サービス」をお受けになってください。

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